韓国が世界初採用 「指輪型血圧計」が変える次世代の健康管理

韓国が世界で初めて「指輪型血圧計」を高血圧治療ガイドラインに採用

── 血圧管理の常識が変わろうとしている

韓国が世界初採用 「指輪型血圧計」が変える次世代の健康管理

※写真出典元:https://www.skylabs.io/en

高血圧は、世界で最も多くの人が抱える慢性疾患のひとつです。

脳卒中、心筋梗塞、心不全、認知症、慢性腎臓病など、多くの加齢関連疾患の重要なリスク因子であり、健康寿命を左右する代表的な指標とも言えます。

しかし一方で、高血圧は「サイレントキラー(静かな殺し屋)」とも呼ばれます。

自覚症状がほとんどないまま進行し、気づいた時には重大な病気につながっていることも少なくありません。

そんな中、韓国が世界で初めて、指輪型のカフレス血圧計を公式の高血圧治療ガイドラインに採用したというニュースが大きな注目を集めています。

これは単なる新しい医療機器の登場ではなく、予防医療やロンジェビティ医療のあり方そのものを変える可能性を秘めた出来事と言えるかもしれません。

血圧測定は「点」から「線」の時代へ

従来の血圧測定は、病院や家庭で腕にカフを巻いて行うものでした。

その測定値は、その瞬間の血圧を示す「点の情報」です。

しかし私たちの血圧は常に変動しています。

睡眠、ストレス、食事、運動、気温、仕事、人間関係など、さまざまな要因によって一日の中でも大きく上下しています。

実際には、一回の測定だけでは本当の血圧状態は分からないことが少なくありません。

近年、医療現場では「院外血圧測定」の重要性が強調されるようになっています。

特に睡眠中や早朝の血圧変動は、心血管疾患リスクと密接な関係があることが分かってきました。

つまり重要なのは、たまに測ることではなく、継続的に測ることなのです。

見逃される夜間高血圧というリスク

今回の韓国高血圧学会ガイドラインが重視した背景には、「夜間高血圧」と「早朝高血圧」という問題があります。

韓国国内の研究によると、睡眠中の血圧が高い夜間高血圧は一般人口の約18〜23%に存在するとされています。

さらに驚くべきことに、その約9割以上が日中の診察では正常血圧に見える「仮面高血圧」に分類されていました。

つまり病院では正常と言われても、夜間には危険なレベルまで血圧が上昇している人が少なくないのです。

夜間高血圧は動脈硬化、左室肥大、脳卒中、心筋梗塞などのリスク増加と関連していることが知られています。

また起床直後の血圧上昇である「モーニングサージ」も、高齢者における脳卒中や心血管イベントとの関連が指摘されています。

こうした異常は、一日一回の測定ではほとんど見つけることができません。

指輪型血圧計は何が違うのか

今回ガイドラインに採用されたのは、韓国のデジタルヘルス企業Sky Labsが開発した「CART BP pro」です。

このデバイスは腕を締め付けるカフを使いません。

指に装着したリングから取得する光電容積脈波(PPG)データをAIが解析し、血圧を推定します。

簡単に言えば、血流の微細な変化を読み取りながら、24時間連続で血圧の変動を追跡する仕組みです。

従来の24時間携帯型血圧計は、昼夜を問わず何度もカフが膨らみ、睡眠を妨げることもありました。

実際に使用したことがある人なら、その不快感をよく知っているでしょう。

しかしリング型であれば、就寝中もほとんど意識することなく装着し続けることができます。

医療機器は精度だけでなく、継続して使われることも重要です。

その意味で、リング型デバイスは大きな可能性を秘めています。

韓国が世界で初めて認めた意味

これまで米国や欧州の主要学会は、カフレス血圧計に慎重な姿勢を取ってきました。

最大の理由は精度でした。

機器ごとに測定精度にばらつきがあり、臨床利用に十分な信頼性があるかどうかが課題だったのです。

しかし今回、韓国高血圧学会は、このリング型血圧計が国際規格であるISO 81060-2:2018の精度基準を満たしていることや、標準的な24時間血圧測定(ABPM)と同等の性能を示したことを評価しました。

その結果、2026年版高血圧管理ガイドラインにおいて「クラスIIb推奨」として正式採用されることになりました。

これは世界で初めての事例です。

韓国は、カフレス血圧測定技術を実際の医療現場へ組み込んだ最初の国となりました。

ウェアラブル医療が本格的に始まる

Sky Labsによると、CART BP proは既に韓国の健康保険適用を受けており、25万件以上処方されています。

さらに全国約1,920の病院・診療所で利用されているといいます。

これは単なるスタートアップ企業の挑戦ではなく、医療インフラの一部として社会実装が始まっていることを意味します。

近年、スマートウォッチやスマートリングは健康管理ツールとして急速に普及しています。

しかしその多くは、あくまでウェルネス用途でした。

今回の事例は、ウェアラブル機器が本格的な医療機器として認められ始めていることを示しています。

医療とウェルネスの境界線は、今まさに消えつつあるのです。

投資家が注目すべきポイント

今回のニュースは、単なる血圧計市場の話ではありません。

その背景には、AI医療、遠隔医療、デジタルヘルス、在宅医療、予防医療という巨大な市場があります。

世界中で高齢化が進む中、医療費の増加は各国共通の課題です。

病気になってから治療するのではなく、病気になる前の変化を早期に発見することが求められています。

継続的な生体データ取得は、その基盤技術の一つです。

血圧だけでなく、心拍変動、血糖、睡眠、活動量、体温など、あらゆる生体情報が日常的に取得される未来が近づいています。

今回の韓国の決定は、その未来がすでに始まりつつあることを示す象徴的な出来事とも言えるでしょう。

まとめ

── ロンジェビティの視点から見た本当の意味

今回のニュースで最も重要なのは、血圧測定の方法が変わったことではありません。

医療の考え方そのものが変わり始めていることです。

これまでの医療は、病気が発生してから対応することが中心でした。

しかしロンジェビティ医療が目指すのは、病気になる前の微細な変化を捉え、早期に介入することです。

高血圧は、その最も代表的なターゲットの一つです。

なぜなら血圧の変化は、血管老化、心臓老化、脳老化、腎臓老化のサインでもあるからです。

指輪型血圧計は一見すると小さなイノベーションに見えるかもしれません。

しかしその本質は、「病院で時々測る健康」から「毎日見守る健康」へのパラダイムシフトにあります。

長寿社会において重要なのは、寿命を延ばすことだけではありません。

機能を維持し、自立した生活を続けられる期間を延ばすことです。

今回の韓国の取り組みは、まさにその未来を先取りする動きと言えるでしょう。

そして数年後には、血圧を測るために腕帯を巻くこと自体が、昔の医療の風景として語られているのかもしれません。


参照元

longevity.technology:Goodbye, arm cuffs? South Korea bets on ring-type BP monitor
腕枷よ、さようなら?韓国、指輪型血圧計に賭ける | 2026年6月5日
https://longevity.technology/news/goodbye-arm-cuffs-south-korea-bets-on-ring-type-bp-monitor/

PR Newswire:"The Era of Cuffless is Here"… Ring-Type Blood Pressure Monitor 'CART BP pro' Becomes World's First to Be Integrated into Official Hypertension Guidelines
「カフレスの時代到来」…リング型血圧計「CART BP pro」が世界で初めて公式高血圧ガイドラインに組み込まれる
https://www.prnewswire.com/news-releases/the-era-of-cuffless-is-here-ring-type-blood-pressure-monitor-cart-bp-pro-becomes-worlds-first-to-be-integrated-into-official-hypertension-guidelines-302781383.html

※写真出典元:https://www.skylabs.io/en


この記事を書いた人