【全身ロンジェビティ時代】顔のスキンケアで花開いた抗老化科学がボディケアへ──「スキン・ロンジェビティ・バター」が示す美容の未来

フェイシャルから全身へ──抗老化科学が拓く新しい美容の境界線
海外のロンジェビティ(抗老化・長寿)に関する最新知見やバイオテック投資の動向をお届けする「ロンジェビティニュース」。
抗老化医学や高度なバイオテクノロジーの知見は、医療だけでなく美容分野にも深く浸透しています。近年では特に、顔のスキンケアにおいて肌細胞の再生力に着目し、肌の健康長寿(スキン・ロンジェビティ)を目指す研究開発や製品化が目覚ましい進化を遂げてきました。
そして今、そのフェイシャルケアで花開いた高度な抗老化科学やバイオ技術が、顔だけに留まらず、ボディケアや日常のコスメといった「全身の美容領域」へと急速に波及し始めています。
2026年9月14日、longevity.technologyに掲載された記事では、フランスのバイオテクノロジー企業「Core Biogenesis(コア・バイオジェネシス社)」と、イタリアの成分専門商社「Faravelli(ファラヴェッリ社)」による最新の共同プロジェクトが取り上げられました。
両社が発表した「スキン・ロンジェビティ・バター」というコンセプトモデルを切り口に、フェイシャルで培われた科学がどのように全身へと広がり、今後の美容と長寿科学の新たな可能性を開いていくのか、ニュースのポイントを解説していきます。
この記事は、スマホ(Safariの「Webサイトを聴く」やChromeの「このページを聴く」機能)を利用して音声で読み上げることが可能です。
顔と体の間に存在していた「科学の格差」とその打破
近年の美容分野では、顔を対象としたスキンケア市場において目覚ましい科学的進化が見られます。
ラボで培養された成長因子(グロースファクター)や、肌のバリア機能を修復する機能性ペプチド、厳格な臨床試験に裏打ちされた有効成分など、最先端の抗老化科学が積極的に取り入れられてきました。
しかしその一方で、全身のケアを担うボディケア市場の進化はそれに追いついておらず、多くの消費者に向けたボディバターやローションは、長年にわたり「単に保湿をして良い香りを纏わせるためのもの」に留まっていました。
顔には細胞レベル・遺伝子レベルの科学を注ぎ込みながら、首から下の身体に対しては従来型の表面的なケアに留まるという、明確な「科学の格差」が存在していたのです。
このギャップに対し、「顔と同じレベルの最先端バイオテクノロジーをボディケアに注ぎ込めば、全身の肌の品質や弾力性、ひいては肌の長寿(スキン・ロンジェビティ)を根本からサポートできるはずだ」という着想が、今回の新たな取り組みの原点となっています。
実験室から発信された「次世代のモノづくり」のプレゼンテーション
これは、他の美容ブランドに対して「バイオ技術を活用した次世代のモノづくり」の可能性を示すプレゼンテーションの役割を果たしています。
本モデルの核となるのは、Core Biogenesis社が独自の植物ベースのプラットフォームで開発した生体模倣成長因子技術である「Peauforia」と「Peauvita」です。
これらは肌が本来持っている自己修復プロセスを模倣するよう設計された化合物であり、有効成分を必要な場所へ届ける脂質カプセル(オレオソーム)に包まれています。これらをイリッペバターや高品質な脂質ブレンドと組み合わせることで、高度な科学的根拠を持ちながらも豊かなテクスチャーを両立させました。
Core Biogenesisの最高商務責任者(CCO)であるトニー・アブード氏は、この取り組みの論理を次のように明確に語っています。
「スキンケアのルーティンが顔以外にも広がるにつれ、バイオテクノロジーは肌の質、弾力性、そして長寿をサポートするボディケア製品を生み出す機会を提供してくれる。スキン・ロンジェビティ・バターは、そうした未来がどのようなものになるかを示す一例だ。」
さらに興味深いことに、両社はボディバターだけでなく、同じ成長因子アプローチを適用した「リップロンジェビティグロス」や「アイロンジェビティシャドウ」を含む「ロンジェビティ・コンセプト」コレクションを展開しています。
長寿科学はもはや一部の高級フェイシャル美容液の特権ではなく、ボディケアやヘアケア、日常のメイクアップにまで浸透する、美容業界全体の確固たる成長テーマとなりつつあります。
サプライチェーンの構造変化と製品化スピードの加速
今回の動きは、単なる画期的な成分の発表にとどまらず、美容業界の裏側に存在するサプライチェーン(供給網)の構造変化をも浮き彫りにしています。
通常、新しい美容製品の開発はコスメブランドが企画を立て、必要な原料を調達し、製造工場に委託するという手順を踏みます。
しかし今回、1926年創業の歴史を持つグローバルな原材料商社Faravelli社は、自ら最先端の技術を取り込み、工場で大量生産できる具体的な処方へと落とし込む作業を主導しました。
これまで黒衣として原料を流通させていた中間業者がイニシアチブを握り、ブランドに対して「先進科学をどのように製品化すべきか」という具体性の高い完成型を提示し始めています。
このサプライチェーンの主導権の変化により、ラボで生まれた高度なテクノロジーが実際の消費者の手に届くまでのスピードが劇的に加速しようとしています。
まとめ──表面的なカバーから、肌本来の再生プロセスを促す時代へ
「スキン・ロンジェビティ・バター」が店舗に並ぶかどうか以上に重要なのは、このコンセプトが提示した美容業界の新しい方向性です。
これからの抗老化美容は、加齢によるシワや表面的な変化を塗布物で覆い隠したり一時的に潤わせたりする時代から、バイオテクノロジーによって肌本来の再生・修復プロセスを促し、老化の根本原因に直接働きかける時代へと移行しています。
顔のスキンケアが辿ってきた発展の軌跡をボディケアが追うとすれば、そう遠くない将来、私たちが日常的に使うボディバターやローションの成分表示欄は、最先端美容液と変わらないほど高度な成分で埋め尽くされることになるでしょう。
自分自身の身体を頭からつま先まで「ひとつの大切な生命システム」として捉え、最先端の科学と調和しながら丁寧に育んでいく。
そんな「全身でのロンジェビティの実践」が、私たちの日常をより豊かで誇らしいものに変えていくはずです。
今回取り上げたニュースの補足情報
Core Biogenesis(コア・バイオジェネシス社)について
フランスのストラスブールに本社を置くバイオテクノロジー企業。アブラナ科の植物(カメリナ)の種子を活用した独自の「分子農業プラットフォーム」を保有しています。植物をバイオ工場として機能させることで、従来の動物細胞由来の製造方法に比べて低コストかつ持続可能な形で、安定した成長因子(EGF、FGF-2など)や高純度タンパク質を大量生産する技術を有しています。
https://corebiogenesis.com/
Faravelli(ファラヴェッリ社)について
1926年にイタリアのミラノで設立され、創業100周年を迎えたグローバルな化学原材料・機能性成分専門商社。食品、医薬品、化粧品、ファインケミカル領域において世界的な流通ネットワークを展開しています。単なる原料供給にとどまらず、自社ラボでの処方開発や、ブランド向けの製品コンセプト構築まで幅広く手掛けています。
https://en.faravelli.it/index.php
参照元
longevity.technology:Your face gets antiaging science. Now what?
https://longevity.technology/news/your-face-gets-antiaging-science-now-what/
Core Biogenesis and Faravelli showcase biotech-powered longevity body care https://www.premiumbeautynews.com/en/core-biogenesis-and-faravelli,28108
この記事を書いた人
1978年生まれ、京都府出身。看護師として京都市内の病院に8年間勤務後、上京。東京都内の総合病院にてICU(集中治療室)、NICU(新生児集中治療室)、手術室での高度急性期医療に従事。看護師プリセプターとして後進の育成にも尽力する。
臨床現場での経験から、既存の制度では対応困難なニーズを痛感し、24時間対応保育所や自費訪問看護ステーションを自ら立ち上げた起業家としての側面も持つ。
現在は、訪問看護の発展を支援する総合Webメディア「いろいろナース」および、抗老化とロンジェビティ(長寿科学)の実践をガイドする「こもれび抗老化ステーション」の編集長を務める。医療現場のリアルな知見と最新のロンジェビティ理論を融合させ、日本人の健康寿命延伸に寄与する情報発信を行っている。

